私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~

「本日は、弊社の社員面接へお越しいただき御足労をお掛け致しました。えー、すでに、本店でバリスタとして勤務されているとのことで、話は伺っています。いくつかこちらから確認したい事項がございますので……」

メガネをかけた男性が堅苦しく言うと、スフラでの勤務状況や、スフラで社員になった場合、どのように働きかけるかを事細かく質問された。その間、石堂さんはずっと黙っていて、まるで面接の成り行きを静かに見守っているかのようだった。

「……そうですか、では、はじめからバリスタ希望としてアルバイトを始めたということですね?」
男性に確認されるように言われる。

「はい、初めは慣れないことばかりで悩んでばかりでしたが、石堂さんに指導されて迷いも吹っ切れたんです。石堂さんは私の憧れなんです」

「ッ――」

そう言うと、今まで黙っていた石堂さんが驚いたように目を開き、すると私から視線を外して照れた表情になった。けれど、左右に座っている他の面接官は気づかない。