私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~

「むしろ、あなたに是非見てもらおうと、会社から持ってきたものですから」

バックミラー越しに水谷さんと目が合う。見てもいいと言われたら興味が沸いてしまう。

私がファイルを手に取ると同時に、車が滑り出した。

それは、十枚ほどあるA四サイズの紙がファイリングされていて、表紙を開くと、“人材開発部 人材教育報告書”と書かれた文字が目に入った。

「これって、社内秘密だったりしないんですか? 本当に私が見てもいいものなんでしょうか?」

「えぇ、特に秘密というものではありませんので、あなたに見てもらっても構いません。それに、あなたはその報告書に貢献した人ですから、権利はありますよ」

滑らかな運転で右折し、再びアクセルを踏む。水谷さんは時々バックミラーで私の様子を窺っている。

――スフラ本店、従業員募集開始。その後、二十四歳女性、一名、採用。

――人材開発部で作成した従業員マニュアルを従業員、花岡里美(以下Aとする)手渡す。

――Aは接客経験なし。マニュアルと併せて経過観察。