私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~

先程、石堂さんは姉と会ったと言っていた。姉はこの音源を届けるために、石堂さんに会いに行ったのだろう。
このふたりが企てている、確かな証拠を垂れ込むために……。

「……ふふ、結構よ。こちらにも切り札があるの」

気を取り直した母が小さく笑い、ハンドバックからあるものを取り出した。

「そ、それは……!」

私は母が何を取り出したのかわかって、母の手からそれを出さないように手を伸ばした。が、もう遅かった。

先日、母が私に見せた石堂さんとのキス写真が数枚、テーブルの上にばらまかれる。

「スフラの御曹司がうちの娘をたぶらかした、そういうネタでマスコミに持っていくわ、そっちがその気なら――」

「ふぅん、良く撮れていますね、で? この写真がいったいどうしたというのです?」

石堂さんは目の前に無造作に広がった写真を無表情で手に取ると、ビリっとそれを引きちぎって母の前に投げ捨てた。

「まぁ、ここで破ったとしても、データはお持ちなんでしょう? でも……」

そんな写真を見てもまったく動じない石堂さんに、母は、どうして?というように、再び固まる。