私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~

『スフラグループの会長の長男はすでに既婚者だった。だから、次男にお見合いの話しを会長に持っていった。昔のよしみだ、悪いようにはしないだろう』

『智美と結婚してもらって、繋がりが持てれば、またスフラグループと契約できるかもしれないわね』

「ッ――!?」

母と一ノ宮さんが同時に息を短く飲む。

ICレコーダーから流れてきたのは、まさに母と一ノ宮さんの会話だった。そのふたりだけの秘密の会話を、誰かがこっそり録音したもののようだ。

『でも、副社長の次男には気をつけなければならないぞ、なかなか勘の冴える男だからな……うちが公にできないような連中と手を組んで地上げをしてるなんて、嗅ぎつけられたら、見合いどころじゃなくなる』

『わかってるわ』

音声はそこで切れた。短い会話だったけれど、一ノ宮コーポレーションが水面下でよからぬことをしている証拠としては十分だった。