「石堂さん? これはいったい……どういうことかしら?」

いまだに困惑を隠せない母が、声を小刻みに震わせて口を開いた。

「すみません、驚かせてしまって……実は、うちの取引先の社長から、今度お見合いをするという話しを聞きまして……しかし、どうやら気が乗らないようでしたので、気まぐれにどんな方なのか写真を見せていただいたんですよ」

まったく話の見えない石堂さんの話に、私を含め母も一ノ宮さんも目をパチクリさせている。

「勝手だとは思ったのですが……写真の女性がどうしても気になってしまって、気が乗らないのなら、自分が出向いてもいいかと尋ねたら、快くこの話しを受け渡してくださいました」

「そんな勝手な……! だって、あなたはうちの智美と――」

うろたえる母に、いままでにこやかに表情を和らげていた石堂さんの目つきが鋭く変わる。

「そちらが勝手なことをなさっているようだったので、こちらも勝手にさせていただいたまでです。私は智美さんとお見合いの話しを承諾した覚えはない」

きっぱりと言い放つ石堂さんに、母が小さく唇を噛んだ。