エレベーターに乗り、レストランの前まで来る。そして、近くにいた仲居に名前を告げると、私は個室へ案内された。

「失礼致します。お嬢様がいらっしゃいました」

「入って」

中から返事がして、プライベート厳守の障子戸が開かれると、母とその隣には見知らぬ中年男性が座っていた。向かい側の椅子には誰もいない。お見合い相手の男性はまだ来ていないようだ。

案内された個室は窓はないけれど、ほどよく小ぢんまりとした空間で、ちょっとした隠れ家のような部屋だった。

ツヤのある高級木材を使った重厚なテーブルの左右には、同じ素材で作られた長椅子。そして、桔梗の花が描かれた絵がひとつ壁にかかっている。照明はほどよく落とされていて、居心地の良さを演出していた。

「あぁ、君が次女の里美さんか」

仲居によって障子戸が私の後ろで閉められると、見知らぬ男性が私を見て言った。

「本当に智美にそっくりだ」

え? 誰――?