私はなるべく晴己を刺激しないように明るく声を掛ける。


乃「なんで結婚したいの?」

晴「一目惚れ・・・。」

乃「それだけ?」

晴「信じて!!」


真顔から一変。

焦ったような、悲しそうな顔をして私を見る。


乃「・・・ありがとう、でも、ごめん。私結婚はできない。」


もし本当に好きだと思ってくれているなら適当に答える訳にはいかないと思い真剣に返す。

だが


乃「ぃ!!」


指が食い込むように強く握られている。

乃「晴己?」


晴己は顔を一旦伏せるとすぐに上げた。

しかしその瞳には深い闇しかなく無表情の方がまだ優しかった。

晴「・・・初めはね、一之瀬の力を借りて日本一になるためだった。」


晴己は語りだした。


乃「日本一?」

晴「弱く情けない父親に嫌気がさした。俺はあんな奴とは違う俺は強い。それを証明したかった。でもね、乃愛瑠の眼を見て乃愛瑠の強い眼差しを見て引き込まれた。魅せられた。乃愛瑠、君が欲しい。こんな気持ち初めてなんだ。」

乃「晴己・・・。」


晴己の瞳が揺れている。

でも、私は・・・・・・・



晴「もともと俺達は婚約してただろ?なんでそんなに俺を拒否するの?」


晴己の纏う空気が変わる。

これが後藤組組長・・・。


一代で急成長した、させた後藤晴己。