「みんなで海やプールに行ったときに何度も上半身見たし、二十歳のときにみんなで飲んだときは酔っ払って全裸で踊ってた。ああ、あとお祭りでふんどし姿も見たし、去年酔っ払ってお風呂で溺れかけてたあんたを助けたのはわたし」

「え、ええ? そうなの……?」

「だからあんたの裸見てもなんともないよ」

「そ、そうなの……」

「智輝って酔っ払うと脱ぐ癖あるじゃない。あれそろそろやめたほうがいいよ」

「そ、そうだね……」


 相次ぐ暴露でオレはすっかり恥ずかしくなって「あああ……」と声を漏らしながら両手で顔を覆う。
 彩香は呆れるような目でちらっとオレを見て、またすぐテレビに視線を戻したけれど、すぐに何かを思い出したように立ち上がる。

「ねえ、空、見た?」

「へ? 見てないけど」

 言うと彩香はオレの手を引いて、ベランダへ進む。えっ、ちょ、オレ、はだか……!

 やっぱりそんなのお構いなしの彩香が差した指の先にあったのは、……

「今日の空は、とってもきれい!」

 だいだい色の空と、同じ色に染まったいわし雲だった。その美しい空を見上げた彩香の笑顔も、だいだい色に染まっていた。

 それを見た瞬間、なぜだか心臓がばくんと鳴った。

 その子は笑顔で、ずかずかと土足で、オレの心に入ってきた。
 ああ、世界はなんて広いんだ。





(了)