「それで、その優しげな微笑みの似合う女性が一紗の母親の皇梨紗さんです。綺麗な方でしょう?
梨紗さんは………そうですね、私の恩人でしょうか。」
「恩人………。」
「えぇ、2人とも私の大切な人です。」
その2人が大切なのは、紫雨の声色と表情からわかる。
「この2人が、お前の3人居るって言う大切な人の内の2人なのか?」
「いいえ、この2人は今の私の大切な人にはカウントされていません。」
「は?何で。」
あれだけ大切そうに紫雨を眺めていたのに大切な人には入っていないって………。
「私の言う3人の大切な人とは、今生きている人の話です。この2人はもう、何年も前に死にしました。」
死にました。
そう言った時の紫雨の表情は、すべての感情が抜け落ちたような空虚なもので、その表情を見た瞬間、俺の背筋は凍りついた。

