「…行っちゃやだ…」
消え入りそうな声で囁く。
俺はその愛しい手をそっと包み、笑った。

笑うことなんて滅多にない俺にとっては自然な笑顔のはず。

すると、キミもつられて笑った。

「…寝るまでだからな。」

俺は顔がにやけるのを我慢しながらベッドに腰掛けた。

「…クロ、ありがとう。」
君はそっと目を閉じ、安心したかのように寝息を立て始めた。

俺は君が寝たのを確認し、そっと手を離した。
小さくて暖かい君の手。
俺は寂しく思いながらも踵を返した。