眉を潜めた私にお母さんは「あるわけないでしょ。アホか」なんて言ってくる。
……心配してあげてるのに…!
ムスッとする私を見たお母さんが笑いながら言葉を紡いでいく。
「幸はさ、那しか好きになったことないでしょ?」
「……うん」
少しだけ考えてみたけど、頭に浮かぶのは那くんばかりで。
好きだと思ったのはいつからかな…。 好きだって気付いたのはいつかな……。
考えてみたけど、全部思い出せなくて。分からなくて。唯一分かってることは、私は誰より那くんが好きで大切だっていうことだけだった。
「お母さんはお父さん以外の人と付き合ったりもしたからね…。こんな事言うべきじゃないかもしれないど、那だけを見る必要はないのよ? 自分の視野を広げることだって大切なんだからね?」
「……うん、分かってるよ…。 それでも今の私には那くんしか考えられないから…。 ありがとう、お母さん」
「――ふっ。那もどうせ幸だけとかって言うんでしょうね。 ……あ、そうそう。今日のあんた達新婚さんみたいだったわよ?」
「なっ〜〜!」
「お母さん先に寝るから。おやすみ〜」
手を振りながら2階に上がっていくお母さんの背中が楽しいって言ってた。


