(私も帰ろ。)



清瀬くんから少し遅れて教室を出る。



と…



「あ…」



廊下の壁に女の子が寄り掛かってこちらを見ていた。

西高の制服。

清瀬くんの友達のひとり、確か奈穂子ちゃんだ。



会釈して通り過ぎようとすると、



「…ねぇ。」

「!」

奈穂子ちゃんが声を掛けてきた。



「え…と…」

「ユウトから聞いた。あなたのこと。」

「え…」

「あなたがユウトの初恋の人だってこと。

あなたが失恋した時にユウトが告白して付き合ったこと。

その人と上手くいってユウトと別れたこと。」

「……」



何かばつが悪くて、返す言葉に詰まる。



私が黙っていると、



「それから…」



と、俯いて廊下のひとところを見つめていた奈穂子ちゃんが顔をあげて続けた。



「これは憶測だけど…

傷心のあなたがユウトに救われていたこと。」



「!」