『先生は私たちのことを妹のように思って下さってるわ。』





あれは2学期の始め。

昼休みの教室に悲鳴にも似たざわめきが聞こえ、ふと覗いた廊下の先に南条の姿を見た時だ。



長いストレートの黒髪に膝上丈のスカートの生徒の後ろ姿。それが南条だと認めるのに時間はかからなかった。

その向こうには数人の生徒達が取り巻く中央に中学3年の落合。よく俺に絡んでくる生徒だ。



なんで中学のフロアに南条がいる?

しかも落合ととか、組み合わせもおかしい。



幽かに聞こえたり消えたりするふたりの声に釣られるように俺が廊下に出ると、二人を遠巻きに見ていた生徒達の何人かがこちらに気付き、振り返りながらひそひそ話すのが見えた。


素知らぬふりで窓際の柱型の陰にそっと立って耳をそばだてていると、南条は言った。



「先生は私たちのことを妹のように思って下さってるわ。

親身になって話を聞いて下さり、時間を割いて手助けして下さり、時にはそうして包みこんで下さる。そういう方よ。

そんなことも分からないで初原先生を語る資格はないんじゃないかしら?」



(俺…?)



南条の言葉に心臓が大きく波打つ。