榎本へ


追伸に書いているように、手紙でのお前は随分とテンションが高いですね。
一瞬別人かと思い、何度も差出人の名前を見ました。

学校でのお前は、いつも教室の隅で目立たないようにひっそりと本を読んでいたり友人と話しているばかりで、暗い女でした。

人が話しかけても勝手に怯えて、こっちがカツアゲしてるのではないかと先生に睨まれることも何度かありました。とても迷惑です。


そんなお前が、手紙の中では人のことを変な顔だの余裕ぶってるだの、挙げ句の果てに初めて字が綺麗と知ったなどとぬかす始末。

お前は俺がノートを貸してやったことを覚えてないのでしょうか。
忘れていたのだとしたら、恩知らずもいいとこです。

しかも、人が住所を教えてやったというのに、それを笑い、わざわざ手紙で報告するあたり、お前は俺のことを舐めているようです。

メール弁慶という言葉がよくありますが、お前は手紙弁慶といったところでしょうか。
俺は元クラスメイトの新たな発見をしましたが、ケータイが普及し手紙という手段が廃れた時代にはわりとどうでもいい情報です。



手紙に理由を聞きたいと書いていましたが、お前が友達から手紙を貰えない理由なんてひとつです。

お前に人望が無いからです。
新学期が始まり、お前と仲のいい奴らと同じクラスになりましたが、そいつらは今日も楽しそうに笑っています。
そんなものです。
今時ケータイも持ってない奴とわざわざ連絡なんて取りたいとは思いません。
何故ならお前はあいつらにとって、数多くいる友達のうちの1人に過ぎないからです。

それが嫌なら、とっとと機械オンチを直してケータイを買うか、手紙などという面倒な方法でも連絡を取りたいと思ってくれるほど仲のいい友達をつくれ。



飯倉浩介


P.S.公園で寝こけるなんて、無防備にも程があります。お前はチビでぼけっとしていて、誘拐するのにうってつけだということを自覚してください。