喧嘩の仕方も気配を感じとることもポーカーフェイスも全部、魁さんからの教えだ。
あの日以来ずっと魁さんは私に稽古のようにほんとにいろいろと教えてくれた。
そのおかげで毎日退屈しなかった。
だからすっかり忘れてた。
「魁、さん。私、学校が………」
学校に行ってなかったことを。
あの日から半年たった頃。
私は、まだ魁さんを呼び捨てできないでいる。
「真面目だなー、まなは。………なぁ、かな」
「え?」
魁さんは、誰かがいる時は私のことをかなと呼ぶ。
護衛の隆さんは例外。
本名は知ってると言ってたから、知っているはず。
それでも魁さんは私と二人きりの時でも本名では呼ばない。
隆さんがいてもまなと呼ぶ。
かなって呼ぶ時は隆さん以外の誰かがいる時、聞いてる時、見てる時だ。
今ここには魁さんしかいない。
けど、かなと呼ぶってことは隠れて見てるってこと?
「かなはあの学校に行きたいか?」
私はその誰か、を気にしなくていい。
だって、魁さんと隆さんがいるから。
このふたりは私を守ってくれる。
ほんとに私を守ってくれて、幸せにしてくれてる。
わかってくれるし、誰よりも味方でいてくれる。
