「つ、ばき?どうしたの?いきなり、突き飛ばして……」
違う。
この人も、かなめも。お兄ちゃんじゃない。
私は1人。
家族は、いない。
私が、捨ててきた。
触らないで。
誰も私に優しくしないで。
『そこで待ってろ』
誰の声だっけ?
知ってるはずなのに。
『俺たちが味方でいてやる』
誰なの?
分からない。
「そんなに、かなめくんがいいの?」
かなめ?
かなめなんて人、私は知らない。
誰?
「…………」
目の前で泣き崩れている珱次を無表情で見下ろす。
するとまた、扉の開く音がした。
「つばき?目が覚めたのか」
朱雀。
やっぱり来た。
「ふっ。ほんとに鍵をかけてきたんだな。偉い偉い」
朱雀は私に近づいて頭を撫でる。
