「....女の人はお前になにかしてくるのか?例えば、遠くから何か合図を送ってるとか...」
「いいえ、何もしないの。アイツは昨日から私に何もしてこない。ただ棒立ちで私の方を向いているだけで、何も害を及ぼすような行為はしてない。だけど....本当に嫌なの。」
「?何が嫌なんだ?別に何もしないし、ただ立ってるだけなんだろ?もしかしてずっと笑ってるとか?」
「ううん、むしろ逆よ。アイツは無表情で喜怒哀楽が感じられないの。だから何考えてるか分からないし、ただ棒立ちしてるだけだからいつも見張られている感じがするの。あと...」
そこで千恵は言葉を詰まらせた。大きく重い唾を苦しそうに飲み込んだ。
「...あと、アイツからは何か得体の知れない何かを感じるの。」
「得体の知れない...何か?」
「言葉で表現できない、気持ち悪い空気というか念みたいなのが伝わってくる。身体の中がモヤモヤして、何故か立ってるだけのアイツに異常な恐怖心を抱くようになるの。執念とか殺意とかそんなんじゃなくて!....今まで味わったことのない感覚なの....」
「そうか...女の人と似てるでもいいけど、どっかで会ったりとか...」
「口元しか見えないから分からないよ。」
「...だよな...」
そこで少しの間静寂になった。



