隣の奴は話しかけるだけでなくて、肩まで揺さぶったのでさっきまで聞こえなかった雑音が一斉に襲ってきた。だが、それでも次の展開を見たい思いは強かった。肩を揺さぶられていても無視しながら読んだ。


「いやいやいや!そこまでする必要なくないか!?おい!お前本っ当に酷いよな。おーいおーい。」


揺さぶる力が増してきた。もう肩だけではなく、身体全身が荒ぶってしまう。本に目をやってもそこにはただ文字が並んでいる紙、物語の入り口は完璧に閉ざされてしまっていた。

本が好きなやつは分かると思うが、本を読む時に喋りかけられるほどイラつくものはない。本は文字だけで構成されているのにも関わらず、読者の想像を膨らませ、ついついドラマのように頭の中で再生される。
本を読んでいる時は一人だけの世界にもよく溶け込んだりするものだ。

だが話し掛けられたりすると無理矢理その世界から引き戻される。せっかく集中していたのに...っと思うのは少なくない筈。


そんなイラつきを感じながら、このハプニングを処理する為に栞を挟み、そっと本を閉じた。



「....何だよ?また「里沙ちゃんが来なくて学校なんてやってられない」とか言うんじゃないんだろうな?」