あんな状態でまず、里沙が生きているはずもない。

何で楽しく終わるはずの学園祭でこんな事が起こるのか....実感が全く湧かなかった。


俺は段々と頭のもやもやが取れていった。

彼女には何か見えていた。親友である吉永を椅子で殴るなんてそんな事は有り得ないし、彼女は"あなた"といった。つまり、あの教室にいたのは俺らクラスメイトと先生。その全員に敵意をあらわにしていたのは、全員がある特定人物に見えていた可能性が極めて高い。じゃなければ吉永を殴るなんて有り得ない。

だが、そんな芸当が出来るなんて考えもつかなかった。


「千恵！？良かった、目が覚めた！大丈夫？」


月璃が嬉しそうな声を上げるが、俺は頭を抱えたまま耳を傾ける程度だった。今では自分の頭の中を整理するのに精一杯だったからだ。

気が付いた千恵はポソッと一言、呟くように質問した。


「ねぇ月璃さん。....矢野さんの横にいたあの女の人って誰なの？」


その一言は何故か俺の中ではとても衝撃的な言葉だったのだ。