俺は敦からその紙を貰うと、そこに書かれていた文字を見て衝撃を受けた。
"あんたの事応援してる。頑張ってね:里優"
里優とは吉永の事だ。俺は何席か離れている吉永の方を見ると、微笑みながら呆れている目でこちらを向き返していた。
敦は友人に認められただけなのに既に涙目だった。
そんな馬鹿見たいな姿を見て微笑ましく思いながら、里沙の方を見る。
だが、あまり直視は出来なかった。何故だか分からないが、あの発表後から里沙の事をあまり考えたくないのだ。考えると何処かモヤモヤしてイライラしてしまうからだ。
俺は自分でも理解できない感情に支配されながらも里沙を出来る限り見た。
里沙は綺麗な黒髪を光らせながら、真っ直ぐな目で津地先生の話を聞いていた。やはり発表が大きいのか、口角は若干だが上がっていた。
だが、里沙の真っ直ぐな視線は段々窓側へと変わっていった。不意に窓の夕焼けでも見たくなったのだろう。
すると、里沙の表情がミルミルと変わっていき、口をプルプルと震わせ、目が段々弱くなっていった。俺は不思議に思い、里沙が見ている窓側へと目線をやると、そこには何も無い美しい光を差し込んでくれる太陽の景色だけだった。



