目覚まし時計が鳴り響き、部屋の中の隅々まで満たされた。当然俺の耳にも音が流れるように入ってきて、眠っていた脳が叩き起された。視界は真っ黒だったが、手探りで目覚まし時計を見つけて、少し冷たいボタンを二回押した。二回押さないと五分後にまた鳴るので、それだけは避けたいからの行為だった。

頭の後ろを掻きながらゆっくりと身体を起こす。もれなく冬場のこの時期には残酷な行為ではあったが、生憎寝ぼけてはいても今日の行事を忘れているわけではなかった。

俺は立ち上がるとタンスに手を伸ばし、薄目のまま制服を着用して、荷物の確認をした。最近忘れ物が増えてきたからこそ、今日は特に念入りにした。

部屋から出て、階段を降りるとリビングからはテレビ音がうっすらと聞こえてくる。
ドアを開けると、父さんが新聞を読みながら食パンをくわえている。母さんは台所で色々と作業をし、真衣の姿はない。まだ寝ているのだろう。俺がいつも座っている席には弁当が置かれていて、座りながら弁当を当たり前のように鞄に入れた。
食パンと牛乳をさっさと口へ放り込み、「行ってきます」と一言言うと、駆け込みながら玄関へ行き、家を出る。

これが俺の日常で変わったとしてもさほど大差はない。これが安定しているからつい忘れがちだが、少なくとも俺はこの生活には感謝はしていた。