「ところで栄治。あなたのクラスにいる里沙ちゃんだっけ?あの子は大丈夫なの?まだ学校には来てないの?」
「いや、今日から来たんだ。少し不安定にも思えるけど、大丈夫そう。」
「そう。良かったわ。PTAの人達皆心配してたからねぇ。ほら真衣!ご飯出来たからさっさとポテチを閉まってこっち来なさい!」
そう言うと俺の言うことは聞かなかった真衣は、すぐにポテチの袋を輪ゴムで閉めて、ソファーの上に置くと俺の横の席に着いた。
並べられていた料理はシチューだった。
さっきまで寒い風に当たっていたので、このタイミングでのシチューは普通に嬉しかった。
真っ白なシチューに所々人参や鶏肉が浮かび上がり、俺を誘っているようにテカリ出していた。シチュー全体からは湯気と美味しい匂いが漂っていて、今すぐにでもスプーンを持って食いつきたい衝動を必死に抑えた。
「じゃあいただきましょうか。」
母さんの一言をきっかけに、バラバラに「いただきます」と言った後に、スプーンでシチューを食べ始めた。
シチューは口の中に広がり、とてもクリーミーな印象を受けた。口の中で十分楽しみ、飲み込むと身体全体がシチューの温かさで満たされた。
だが、至福の時はすぐに終わるもので、その衝撃は一瞬だった。



