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「ただいま。」
冷えきったドアノブを手前に引いて、俺は薄暗い玄関に入った。前にある廊下と階段に明かりはなく少し薄暗かったが、手前のリビングには光が灯されていて、中から「おかえり」と小さいが聞こえてきた。
俺は乱雑に置いてあった靴を揃えると、その横にピッタリと置いた。
リビングのドアを開けると、外とは別の世界とも思えてしまうくらい温かい空気が俺を歓迎した。
左側には母親が台所で料理をし、早めに帰ってきたであろう父親は新聞を読んでいた。
右側には大型テレビで漫才を見て、ゲラゲラ笑いながらポテチをほう張る妹がコタツに縋るようにしていた。
そのすぐ後ろにあるソファーにブレザーを乱雑に置いてあり、シワが既に着いていた。
「おい真衣。ブレザーしわくちゃになるだろうが。ちゃんと掛けとけよ。」
「ほーい」
気力がない返事をして、完璧に俺を流した。視線はテレビと手元にあるポテチの山にしか言っていなく、俺は大きいため息を自然と吐いた。
俺は鞄を下ろすと、さっさとブレザーを掛けて父親の目の前の椅子に座り、携帯を眺めた。
すると父親は手元にある、湯気が立ちのぼるコーヒーを啜ると、新聞を折りたたんだ。



