恐怖の渦の中


だがフラッシュバックを呼び起こされるし、もしそうなった時の負担は酷いだろう。


「里沙!!どうしたの!?」


俺が里沙の事が少し心配になったし、"アレ"の事について聞こうとした直後に、生徒玄関から吉永が走ってきた。

吉永は着いたのと同時に敦を押し倒して、里沙の顔を覗き込んだ。


「里沙!里沙!?どうしたの?コイツらに何かされたの?」


「ち、違う!俺達は何もしてないって。....多分....」


「はぁ!?多分って何よ多分って!里沙は傷付いてるかもしれないのに、一体何をしたのよ!!」


吉永は鋭い眼光を俺達に向け、敦はその眼光に圧倒されて、数歩下がってしまった。


「菜乃...違うよ。....本澤君達は何も....」


「いいから里沙。ほら、立って?話は後で聞くって。明日学園祭なんだから、身体を休めないと。」


そう言い残すと、吉永は里沙を抱えながら、学校を後にした。俺と敦はそのまま取り残されたように立っていたが、数秒後に敦からこんな言葉がこぼれ落ちた。


「俺....喋っただけじゃなくて、触れる事が出来てた.......」


何処か遠くを見ているような目をして、どこか上の空だった。敦の頭の中は都合が良いように作られているらしいが、俺はその事を踏まえても今日の頑張りには感心していた。