恐怖の渦の中


里沙は少し動揺が見え隠れした事を言うと、さっさと歩き始めた。


「...ま、待ってくれ!!」



だが、そこでいつもなら棒立ちの敦が、里沙の腕を掴んだ。

敦の意外な行動に里沙は勿論、俺すら驚いた。


「あっ!....ご、ごめん。急に。...実はあと一つ要件があってさ...れ、連絡先教えてくれないか?」


里沙はまだ目を見開きながら、敦に声をかけた。


「な、何で急に?」


「お、俺...矢野さんの事心配だし、知りたいんだ。何か悩み事とかあったら....力にもなりたい。
でも、嫌だったらそれでいいんだ。...どうかな?」


あの恋になると引くことしか出来ないと思っていた敦が、ここまでグイグイ攻めるとは思わなく、俺は感心していた。
俺の感想だが、言葉自体は完璧。だが、少し攻めるのは早かったのだと感じた。

俺は自分の事のように緊張しながら返事を敦と待った。

だが、里沙は返事をするのではなく、意外な事をしたので、俺と敦は驚愕した。


何と里沙は涙をボロボロと出し始めたのだった。その理由は冷静でいれば何個か思い付くが、その衝撃さからその思考は出てこなかった。