恐怖の渦の中


待ちに待った里沙だった。

マフラーで首元を温め、寒さに耐えながら歩いていた。右手にはスマホが握られていたが、スマホには目をやらずに周りをキョロキョロとしていた。


敦は勢いよく立ち上がり、里沙の方へ向かっていった。
その様子を見るために俺は校門に身を潜めながら見ていた。

敦の様子から見ると、学祭と久しぶりの里沙の登校で変なテンションに入った挙句の行動だろう。俺は密かに敦が里沙を目の前にした時の挙動を楽しみにしていた。


敦が勢いよく里沙へ駆け寄ると、里沙はビクっとして身体を少し跳ねた。


「え、えっと....本澤君?どうしたの?」


「あ、あの...ちょっと....えっと...聞きたいことがあって...」


いつもと違う敦の姿を見て、危うく吹きそうになった。あそこまでピュアだったとは思わなかったので、明日からいじろうと速攻で決めた。


「や、矢野さんはさ...何か無理しているようにも見えたからさ、大丈夫かなって....」


「今日皆にそんな事を言われるけど、本当に大丈夫だから。そこまで心配することじゃないよ?」


「し、心配するよ。...だって....四日も学校休んでたし、何か心に傷が出来たとか...」


「....だ、大丈夫だから。ね?じゃあまた明日ね。」