その痛みに顔を顰めたが、俺は決して悲鳴を、痛みの叫び声を上げようとはしなかった。最後の最後で俺の意思がそれを許さなかった。

激痛に耐えながらも俺は加奈に声をかけた。


「...お、俺は!....う、嬉しかったん...だぜ?お、お前が...気持ちを...伝えてくれた時....本当に...ほ、本当にだ。....俺は...俺は....」


俺は加奈の肩を掴み、こちらへ引き寄せ、抱きしめた。力が入る限り、ギュッと加奈の頭を胸にやって抱きしめた。その瞬間は、俺は幸せだった。
加奈と同じ死に方、同じ瞬間に死ねる。和一先生の言う通り、確かに後悔だらけが残った俺の中で唯一救われる時だった。


「...愛してるよ加奈....今度は、お前が目を覚ましている時。お前と面と面を向けて、お前の目を見て...ちゃんと伝える。
こんな俺を...こんな救いようのない馬鹿を好きになってくれてありがとう....加奈...」


俺は抱き締める力を弱め、目を閉じた加奈の顔を見てそう言った。すると、彼女はニコッと笑ったような感じがした。
俺は胸の内から混み上がってくる感情に身を任せ、改めて思いっきり抱き締めた。

鋭い痛みが頭の中心部まで来ると、最後の最後で、それを上回る更なる痛みが瞬間的に襲ってきた。

俺はそれに耐え切れず、意識がぶわっと離れていくことが感じられた。


俺は二度と目覚めることのない、深い深い眠りの中に入っていった。