病院の時には意識していなかったが、眼鏡をかけていない彼女を見るのは初めてだったし、状況が影響しているのか、妙に新鮮で愛しく思えた。

ピンク色の頬に手を添えて、親指で撫でる。
また涙が溢れてくる。さっきの悔しさや怒りの涙ではない、悲しさや謝りたい気持ちで心がいっぱいだった。


「.......ごめんなぁ加奈ぁ....俺が不甲斐ないばっかりにこんな事に巻き込んじまって...
俺って本当に馬鹿だよな。お前の気持ちに気付いてやることも出来ず、こんな状況になって...
せめて、お前が目を開けている時に返事をしたかった。お前と一緒に同じ道を歩きたかった....」


言葉にする程後悔は深まり、涙がどんどん出てくる。さっきで出し切ったと思っていた涙が止まらない。流れずにはいられなかった。

すると頭のてっぺんから鋭い痛みが走る。何かが突き刺さったような痛み。その痛みを感じた所から温かい液体が、俺の頭を沿って流れる。
加奈は意識がないまま、頭から血を流し、床へ徐々に溜まっていく。

そこからその痛みは中へとゆっくりと伝わっていく。そしてそれは感覚的に指だと分かった。鬣犬は俺の脳まで指を入れてくると分かった。

激痛、今の今まで感じたことのない激痛。あの時苦しんでいた理沙の気持ちがようやく理解出来た。