そのまま帰ると思いきや、静一先生は鉄格子の向かいからコチラをジッと見てきて動こうとしなかった。
「し、静一先生!早く逃げて下さい!!このままじゃああなたまで呪いに....殺されてしまいます!!」
俺がそう警告しても静一先生は無表情。帰る素振りも質問を問い掛けてくる訳でもない。ただ無表情、無表情でコチラを見つめてくるだけだった。
その異常な行動に俺は鳥肌が立った。静一先生の目的がまるで見えない。
すると、視界が一気に赤くなっていく。まるで部屋全体を赤いペンキで塗りたくったような感じになった。
目の前に鬣犬が現れる。彼女は棒立ちしてコチラに身体を向けている...と思った瞬間、ボサボサの髪がゼロ距離まで急接近。
「ヒッ!」
「怖い....?怖いかァァァァア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!私を恐れろおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
鬣犬は不気味なトーンでそのように吠えた。耳の鼓膜がおかしくなりそうな声量、俺は心の底から震えた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ヤメロォォォォ!!」
俺はアルマジロのように身を丸め、防御した。だが、それも無意味。耳元で何度も何度も鬣犬が呟く。



