和一先生が優しい口調でそう言ってくると涙が止まらない。そんな言い方、あまりにも卑怯だったからだ。
「じゃあ...君が安らかに眠れるよう祈るよ...」
バァンッ!!!
一発の銃声が鳴り響く。俺はその音が耳へ入り、脳に伝わる瞬間に目を瞑った。
ここで終わる、俺という一人の人生が....
だが、一向に意識は消えない。自分の息が聞こえる。床の冷たさがまだ頬を刺激していた。
何故?どうして?そんなことを考えていると、何か落ちる音がした。
俺は開くはずもないと思っていた瞼を開かせ、音の方を見た。
するとそこには倒れている和一先生の姿があった。
おでこに赤黒い穴を開け、じわっと綺麗な鮮血が頭を中心に広がっていく。目と口は開きっぱなしで、まるで魚の死骸のようだった。
それは本来、俺が成るべき姿。和一先生がそうなっている理由がどこにも見当たらなく、よく分かっていなかった。
銃痕からして自殺はない。自殺をするなら頭の横か喉くらいだが、これは誰かに撃たれたとしか思えない痕跡。
俺は倒れている和一先生から上の方に目線をやった。
鬣犬の幻覚があるのか、空間は渦が巻かれたようにうねっていたが、しばらくすると元に戻り、目の前に立っている人影が徐々にハッキリとしていく。



