俺は追い付けない頭で思い返した。鬣犬は俺の返答に喜んだ...何故?どこに....
俺はようやく気が付いた。あの部分、あの部分に鬣犬は喜んだのだ。
「...俺は"もう怖くない"って言った...."もう"。つまり前までは怖かった事を言ってた...」
「そうだね。恐怖っていうものは平気にはなっても克服することは決してできない。心のどこかで少なからず恐怖という感情は残る。だから、恐怖という名のスイッチを切れずに時間切れで死ぬ。
呪いの幻覚や鬣犬の近寄り方、一旦消えての最後の大詰め、あれなんか恐怖を煽り最大限に引き出すための儀式だ。
鬣犬も言ってた筈だろ?"恐怖心で一杯になった時が食べ頃"っと。」
確かに言っていた。和一先生の話を聞けば聞くほど納得し、同時に気付けなかった自分の愚かさを悔いていた。
少し考えればわかること...何も考えつけなかった....
和一先生は興奮が冷めず、立ち上がりながら俺に熱く話し掛けてきた。
「だから、 鬣犬を殺せるのは"鬣犬に恐怖を持たない人間"、つまり敦君だ!潤平君は天性の才能とか言っていたがそんなんじゃない...いや、そこまで矢野さんの事を想えるのは天性かな?
....敦君は対鬣犬の力の持ち主。彼さえいれば鬣犬を殺せる!!呪いを解ける!!



