意識が戻り、最初に感じたのは頬の冷たさだ。何か冷たい物が俺の頬にピッタリと付いていた。目を開けると、それは色落ちした薄緑色のタイル、床だった。俺は床に倒れていた。
手を使いながら頭を上げ、周囲を見渡してみる。

さっきの小屋とは違うまた別空間、全体を一言で言い表すなら"薄汚い部屋"だ。
何も映せないほど白くなった鏡、その下には苔や黒い汚れがへばりつく手洗い。
すぐ左にはトイレとベット。だがこれも古びていて、ベットに関しては埃だらけ。トイレは異臭を放っていた。

まるで古びた牢屋、目の前のドアは厚そうな鉄製で、丁度頭が来る所は鉄格子で中の様子を確認できるという感じだ。

俺は意識を失う度に場所が変わる、色んな世界に行く旅行のような感じがして、フッと鼻で笑った。

そして右隣にはここにいるはずもない加奈が倒れていた。病院服のままで相変わらず意識はない。


「加奈....お前...何でここに....病院にいるはずじゃねぇのか?」


俺は幻覚かと思い、加奈の顔に触れると体温を感じる。触れていると落ち着くような温もり。

俺は立ち上がろうとしたが、左の横腹に強烈な痛みを感じて、それは出来なかった。それと同時に俺は足を縛られていることに気が付いた。今度はとてもキツく、何もしてない今でも痛かった。