「大丈夫だよ、何も問題ない。それに早く終わった方がいいじゃん?それに越したことはないと思うけど。」
「うん...そうですよね....」
俺が里沙の事を苗字で言うのは敦が色々とうるさいからだ。そしていつも通りに話せないのは、恥ずかしいが女性経験なんて一切無いし、どう接すればいいのか分からなかった。自分でも分かっているが、コミ障だ。
加奈のように大人しい女子になら普通に話せるのだが、そうではない女子はどうも苦手だった。
結局俺の思惑は失敗に終わり、黙々と作業を進めた。
看板は思った以上に出来は良く、予定よりも早く終わってしまった。そのまま嵐が去るように、里沙は発表の練習を手の空いたメンバーと一緒にやるために駆け付けていた。
取り残された俺ら三人は、新たな仕事が出来てその手伝い。
正直退屈さと苦痛を感じてしまっている。
その新たに始まった仕事すら俺はぼーっとしながらゆっくりと作業を進めていると、千恵が注目を集めた。
「皆!もうそろそろ時間だから準備して早く行こう!もしかしたら早めに使えるかもしれないし。」
千恵は音楽教室のコーチみたいな口調で呼び掛けると、それぞれ持っていく物を持って、ゾロゾロと教室を出ていく。



