里沙は本来なら吉永と一緒でやると思いきや、係決めのジャンケンに負けてしまい、看板組へ移ってきた。彼女はやる気があるのだが、前まではあまりスムーズで無かった。クラス発表のことで頭が一杯だったのだろう。
だが、復帰してからは食いつくような意欲が出てきた。クラス発表は家で覚えたとは言っていたが、まさか看板作りにまで専念してくるとは思わなかった。
彼女の作業スピードのおかげでミルミルと看板が完成していく。本来は有難く思う場面だが、俺はサボりたいし、後ろから敦の意味不明な殺気が伝わってきて、余計なお世話としか思わなかった。
「西条君と永島君?手の動きが止まってるよ?早くやらないと間に合わなくなっちゃうよ。」
里沙は看板に目をやりながら話し掛けてきた。改めて指摘されると少なくともドキッとしたし、見ていないのが余計に怖い。
すると永島が止まっていた筆を動かしたはじめて俺は察した。
永島はやる気は無いものの、言われたら何となくでやる人物。つまり指摘されたら、義務的なことを感じて作業するということ、看板作りは早く終わってしまう。
俺は何とか早めに終わらせないようにと、敦の殺気を無視して里沙に話し掛けた。
「や、矢野さん。そんなに急がなくてもまだ時間はあるし、そんな根気詰めて大丈夫なのか?休み明けだし少しくらいゆっくりと」



