車輪と人の声が飛び交う中、青い長椅子に座りながらボーッとしていた。

隣で白い服を着たオジサンが話しかけて来ているが、全くもって耳に入らない。
俺が気にしているのは目の前に横たわる二人、それぞれベットに寝かされ、呼吸器を付けられている。
二人とも目を閉じていて、眠っているように思えた。


「西条君!お願いだから、覚えていることでもいい。教えてくれないか?一体何があったんだ?」


白衣を着たオジサンの言葉がようやく耳に入って、俺は遠くを見ながら思い出した。

俺が目を覚ました時には車は既に横転していた。埃だらけで、息苦しいったらありゃしない。車のガラスは地面に飛び散っていて、ボディもベコベコ。


おれの腕の中には加奈がいた。加奈は俺の腕の中で既に意識を失っていた。
視線を色々な方向へやると、敦が砂埃で傷が顔に点々としながら倒れていた。
矢沢さんの姿は見えなかった。

俺はすぐに携帯で救急車を呼び、加奈と敦を車の中から引きずり出した。

車は何とも悲惨な状態で、大きくへこみ、もう廃車になっていた。
トラックはまだマシだが、大きくへこみ、煙を出して停まっていた。