────────────────────



夕焼けが美しく照らされ、ありとあらゆるものがオレンジ色へと姿を変えた。それは俺も同様、俺の目、鼻、口、肌、髪、俺という全てはオレンジ色に染まった。
そして俺は他の生物と共存している気がした。

虫、鹿、花、葉っぱ、土に付いている微生物、全ての命を与えられた生き物と繋がっている感覚を感じていた。
それはなぜが、答えは簡単だった。

死を感じているからだ。死にたい人はどうかは分からないが、まだ生きたいと思っている人からする"死"とは悟りを与えてくれる。

一分一秒が貴重で、こうして息を吸っているだけでも幸福。今まで遊びで潰していた蟻ですら、感情移入してしまう程だった。
今まで自分を支えてくれた人達に感謝の気持ちが溢れる。


その美しい世界の中でひとつの異物が視界の中に現れる。それは"死"だ。俺にとっての"死"は鬣犬。鬣犬は俺方向を向きながら、少しづつだが距離を縮めてきている。

さっきいた位置よりまた近付いていた。

呪いの期限は様々、俺達が知っている一週間もあるし、矢沢さんの七年間というケースもある。
だが、この感じ、今まで話に聞いていたものより早く近づいてきていた。

鬣犬を倒して呪い解除すれば早いのだがそんな気力は残っていなかった。早い話、俺は屈服していた。