恐怖の渦の中


「あっ...ありがとうございます....」



青山は敦の肩から手を離し、両手で白いタオルを足に巻き付けた。


「よし....じゃあ皆早く車に乗って。すぐに病院へ向かうから、話は車の中で聞かせてもらう。」


矢沢さんが急いで運転席に座るのをきっかけに、俺達も後部座席に乗り込んだ。だが、青山だけポツンッと立っていた。


「青山?どうしたんだ?早く乗って病院へ」


「....悪い西条。お前達は先に向かっててくれ。俺は...一度家に帰りたい....こっから近いんで歩いて帰ります。」


「何言ってんの青山君。病院へ行かなきゃその足の怪我は」


「いいんです!....とにかく一人にさせてください。....西条、後で電話を頼む...」


青山はそう言うと、足を引きずりながら一人、山道を降りていった。


「....追いかけなくていいのかよ、栄治」


「....青山が何を考えているのか分からないが、今はそっとしておいた方がいいって思ってな。...」


俺の気持ちを共感してくれたのか、矢沢さんは黙ってエンジンを掛けてくれた。
加奈に負担がかからないように、デコボコしてる山道をゆっくり、そして出来るだけ早く運転してくれていた。

その間に俺は屋敷で起こったこと全てを話した。
矢沢さんは昔のことを思い出したのか、ハンドルを握っている手が震えていた。