恐怖の渦の中


────────────────────


俺達は来た道どおりにこの村を抜けた。鬣犬の視線を感じながらも、出来るだけ見ないように歩いた。
加奈の傷が土につかないように、気遣いながら外へと繋がる通路を抜けた。

抜けるとすぐ側に矢沢さんの車が停めてあり、運転席には矢沢さんがスマホを眺めているのが見えた。
矢沢さんは視界の端で俺達を見つけたのか、スマホをすぐに置いて、運転席から飛び出して駆け寄ってきた。


「ど、どうしたんだその怪我!!何があった!?」


「アイツです。アイツに襲われました。俺達以外は全員殺られましたよ....」


「そ、そんな...と、取り敢えず早く車に乗って!病院に行かないと!」


矢沢さんは車の中からタオルを取り出し、加奈の傷口に優しく当てた。加奈は表情が多少歪むが、何もしないよりマシだ。


矢沢さんはもう一枚タオルを取り出し、青山に差し出した。


「はい、青山君。足を怪我してるみたいだから、せめてこれで止血くらいは....」


矢沢さんは青山の目の前にタオルを渡してきたが、青山は何処か遠くを見ていた。生気がなく、ボーッとしていた。


「あ、青山君?どうかしたのかい?ほら、受け取って。」