「はい、これ。素手じゃあ逆に殺されちゃうかもしれないでしょ?」
「はっ、これよりお前の包丁の方が欲しいんだけど。」
「無理無理ぃ〜嫌だよ〜。さぁ、早く行ってきてよォ〜。」
俺は苛立ちを覚えながら、奥に吸い込まれそうな入り口をボーッと見つめていた。そこである疑問が浮き上がってきた。
俺達が来た時には誰もいなかった。だが、今はいるらしい。つまりここに入れられて間もないって事だ。
普通閉じ込められたのなら、こんな風に光や音に敏感、何か音とか人がいるっという気配を感じられる筈なのだがそれが全くない。
そもそも人はいるのか?
鬣犬は実験の記録でも"遊び"で餌を弄んでいた。つまり、これも"遊び"で二人を逃がす気もないのか?
考えれば考える程思考のサイクルに入っていき、段々確信へと定まっていた。
俺は決断した。鬣犬の言う通り、屈服するだけでなく、反撃することを。反撃ののろしは心の中で挙げられた。
「...なぁ、鬣犬ちゃんの名前の由来って知ってるかい?」
「ん?名前の由来?しらな〜い。興味も無いし、そんなの知ってもお腹減るだけだしぃ〜。」



