鬣犬と遭遇しなければ曲がっていた曲がり角を曲がると、吉永の言う通り階段が視界に現れた。
そして階段があるということは出口は目前だ。

青山は走り始め、急いで階段のヤスリに手をかけ、駆け下りて行った。


「早くしろお前ら!置いていかれてぇのか?」


目の前に脱出の扉があるので、気持ちが急いでいた。だが、俺にはそれに違和感しか持てなかった。
何か簡単過ぎる、何かを忘れている、そんな気持ちがしていた。


「お、おい青山!少し待てって!」


俺の言葉は届かず、青山はどんどん先に降りていってしまう。
階段を降り終わり玄関のドアノブに手を差し伸べた時


ガシャンッ!


何か機械的な物が勢いよく閉じる音が聞こえた。その音がこのタイミングで聞こえることに俺は心臓が浮く感覚になった。

青山の方へ視線をやると、床が浮き上がって青山の右足にまとわりついていた。
俺の常識の範囲外のことが起こり、頭が混乱したが、よく目を凝らすとそれは床ではなく床と同じ色の紙だった。
そして、その紙の下には黒い物がチラついていた。