静かにすればするほど大きく聞こえ、俺達の耳を刺激する。


「よ、吉永....クソ...俺は...俺は何のために...クソ....クソッ!」


青山は床を拳で叩いて叫んだ。ドアの向こう側で起きていることを想像するのは難しいことではなく、咀嚼音以外聞こえないことにそれを更に明確なものにしていった。


「何が警察官になりたいだ...何が人を助けたいだ...俺は誰も助けも守れもできねぇのに...」


青山は大粒の涙を零しながら額を地面に擦りつけていた。
俺はそんな青山を優しくしようなんて思わなく、無理矢理青山の手を掴んで起き上がらせた。


「俺は...少なくともお前に助けられてる。吉永の最後の言葉....あれもそうだったんじゃないのか?」


吉永のあの口パクが脳裏に浮かんでくる。いつも日常的に使われている"ありがとう"ではない、本当に心の底からそうしたいんだ思っていたというのを強く感じられていた。


青山は更に涙を流すと、右手で目をゴシゴシと拭いた。


「....吉永がくれた時間、命を....無駄にする訳にはいかねぇ....いくぞ。」


青山は廊下の奥へと走り始めた。加奈も涙を流しながら両手で口元を抑えながら奥へと消えていく。