「千恵。私...本当に大丈夫だから。発表に出させてくれないかな?」


里沙は優しい言葉をボロボロの千恵にかけた。本来、ここの立場は逆転しなければいけないのだろうが、仕方が無いようにも感じた。

千恵は眼鏡を少し上に上げると、右腕でゴシゴシと目を擦った。
だが、擦った後は自分の中で切り替えたのか、少し澄んだ表情をした。目は少し赤かったが....


「でも...せめて目の下のクマに関して教えてくれない?夜も眠れなくて辛そうなんじゃないか?って思ってたから....」


どうやら目の下のクマに気づいたのは俺だけでは無かったようだ。千恵に指摘されて、忘れかけてきたことを思い出してしまって、顔を赤らめる里沙の姿が映った。

その事に興味を示した周りの女子が一斉に里沙の顔を覗いてきた。里沙は必死に顔を防ぐがそれは無意味だった。


「どうしたの里沙?そのクマ。」


「え?い、いや...ちょっと一昨日まであんまり寝付けなかったから...」


さっきまでハキハキと喋っていた声は一気に小さく縮こまってしまう。

だが、やはり周りはクマがあるということだけに関心を抱くだけで、その先へはいかないようだ。