謝ればいいかとさっきは堪えたが、こいつに謝罪という二言は無いらしい。
拳に自然と力が入るが、ここは大人の対応をしようと深呼吸で感情を抑えた。
するとここで勢いよく里沙に近付いてきた人物がいた。
千恵だ。
「あ、あの....矢野さん?ちょっとクラス発表の事なんだけど...」
いつも堂々としていた千恵が、珍しく難しい顔をしてモジッとしていた。里沙にも負けない落ち着きのなさが溢れていた。
だが、里沙は話の内容を察すると、真剣に千恵を見つめた。
「...千恵。私は出るよ。」
「え!?で、でもここ最近合わせなんか出来てないし、今日くらいしか出来ないんだよ?代役はいるし、矢野さんも心配だし....」
「今日出来るじゃん。大丈夫、家にいる時も気持ちが整理したら必死に台詞とかダンスも覚えたの。後は最終チェックだけ。
...千恵はこの役がピッタリって思ってくれてたから私にお願いしたの覚えてる?私は絶対にやり遂げたいの。」
「で、でも本当に大丈夫なの?まだ気持ちの整理とかが....」
「ちょっと千恵!?里沙がこんなにもやりたいって言ってるのに、何でやらせたがらないの!?」
千恵と里沙の間に吉永が割り込んできた。



