高橋さんが何故こんなにも険しくしている理由は一目瞭然、私はいつもなら元気で明るい子。人を傷付けず、傷つけるのを恐れる子という印象で私自身も自覚している。
「....何でもないよ。少し個人のことでイライラしちゃっただけだから。」
私は素っ気なく答えた。予想通り店員さんも心配そうにこちらを見てくる。高橋さんはとても人柄が良くて、いつも楽しく話に付き合ってくれる。だからこそ、いつもと違う私を見て心配してくれたのだ。
だが、今では余計なお世話としか思えない。私は今視界をほかの所へは移したくなかったのだから。
私はすぐに漫画の方へ目線を持っていくと、高橋さんは短いため息を吐いた。
「ねぇ里沙ちゃん。何かあったの?学校とか家で何か嫌なことでもあるんだったら、俺は相談にのるよ?」
「ううん...何にもないよ。」
「何にもないわけないよ。何か里沙ちゃんいつもと違う気がするんだよ。服装だってこの時間帯だったら大抵制服だし....本当に相談にのるよ?」
「....本当に...大丈夫ですから」
私はそれを言い残してコンビニを小走りで後にした。
後ろから私を呼ぶ高橋さんの声も聞こえたが、私はそれに反応して振り返ることはなく、下のコンクリートしか目に入ってなかった。



