「....趣味なんだよ....」
「え?趣味?」
俺がそう言うと、野宮さんは顔を少しばかり赤くして視線をそらした。
「....特殊部隊、そういうのが好きなんだよ俺は。だから、単独になった時の行動とか調べてみたりしてたんだ....
笑いたければ笑え。いい歳こいて特殊部隊に憧れるなんて...全く、娘に聞かれたらいい笑い者だ....」
いつも敵で、あまりいい印象が持てなかった野宮さん。人間としての部分が欠如していると思っていたが、初めて人間っぽい反応を出して、衝撃と同時に安堵が訪れてきた。
そんな何気ない話をしていると、野宮さんの足がピタリと止まった。俺は野宮さんの向こう側を見てみると、人一人が這って通れるくらいの穴があった。
その穴の先は塞がっているのか、光などは見えなかった。
「....いけそうですか?何か塞がっているっぽいですけど...」
「あぁ大丈夫だ。これもまた窪みがある。そしてこの位置、出るところはまだ屋敷内だ。恐らく二階に出るはずだろう。」
野宮さんはそう言うと姿勢を低くし、地面に高そうなネクタイを擦りつけながらその中に入って行った。
ガラッと音がしたら、野宮さんの身体が一瞬ビクッと震えた。



