「あぁ言った。だが、栄治君。気付かないか?こっちの部屋は電気が消えたが、階段の部屋は?弱々しいが電気を灯している。これは意図的に隠し部屋"だけ"を消した可能性が高いんだ。
誰かが俺達をあの部屋に閉じ込めようとしたのは明らかで、この階段の部屋に導こうとしているのかもしれない。」


「それはそうですけど....もしかしたらそんな事を知らないかもしれないじゃないですか!」


「あぁ。だから「不用心に入らない方がいい」と言ったんだ。慎重に行こう。俺の後ろに皆付いてきてくれ。」


野宮さんはそう言いながら先行すると、机で拾った鉛筆を投げたり、叩いたりして慎重に足を進めた。

錆色の螺旋状の階段はギイギイと嫌な音が鳴ってはいるものの、床が抜けるような感じはしなかった。サビの臭いが鼻をツンっと刺激し、手すりに触るものの手に付着してしまう。
だが、今の調子で何も無いので少しだけ緊張感が解れてしまったのか、こんなことを聞いた。



「....さっきみたいな対処、これも警察で教わったりするんですか野宮さん。まるでプロみたいでしたね。」


「.......習うっていっても集団行動だ。単独の対処なんざ習ってないさ。」


「え?でも....俺たちが気づかないことも気を配っていたし、とても慎重だったし....まるで、特殊部隊みたいな感じでしたよ?」