恐怖の渦の中




「大丈夫か加奈?無理すんな。吐きそうな程辛いなら早く上に上がれ。吐く姿なんて見られたくないだろ?」


俺は加奈に近寄り、背中をさすってやった。
加奈は涙目になりながら固くなに拒否し、頭を左右に振った。


「....よし!じゃあ頑張ろう。限界だったら遠慮なく上に避難しろよ?」


俺の一言に加奈は苦しそうにコクリと頷いた。
本来ならここで無理矢理にでも上に上げるべきなのだが、苦手なのにここまで付き合ってくれた加奈の意志をへし折るような真似はしたくなかった。


「...おい西条。この臭いの原因はこれだ....」


青山は小さく息を呑むようにそう言った。
俺は青山が自分のスマホで当てている光の先を見た。

そこには白骨死体が何体もあった。色んな所が欠けていて、歯や右肩、頭が半分に欠けているのも見受けられた。
そして一番印象に残った死体は、まだ白骨化しきれていない死体だ。

黒く腐食した肌に赤黒い肉から出てくるウジ虫。頭がパックりと割れていてどんな顔かは分からないが、喉には何かに削られたような痕跡が見られた。
服はボロボロで男か女か区別がつかない程、年月も立ち、専門家でもなんでもないが白骨しかけている段階だと勝手に思っている。

その悲惨な光景と臭いで俺は胃の中のものが喉から出てきそうになった。