恐らく里沙に連絡を入れたが一向に返ってこないのだろう、顔が疲れ果てていた。


ガラガラ


俺の片耳で聞こえた教室のドアが開く音。分かってはいるものの反射的にそこを向いてしまう。
ドアの方へ目線を合わせると俺は二つの事に気付いて衝撃を受けた。


まず一つ目は....



「里沙!?」


そう。一つ目は矢野里沙が登校してきたことだ。それに気付いた吉永は飛び跳ねるように机から立つと、そのまま体当たりをする勢いで里沙へ抱きついた。


「里沙!何で返信してくれなかったの!?私心配で心配で....」


「う、うん。ごめんね愛香。」


吉永の行動をきっかけに主に女子が次々と里沙の方へ集まっていく。


「里沙〜久しぶりじゃん!」


「里沙大丈夫なの?もう平気なの?」


里沙を中心にゾロゾロと女子の群れが集まった。もうここからでは里沙の姿が見えない程になった。

チラッと隣を見ると疲れ果てながらも嬉しそうにしていた敦の姿が目に映る。多分敦は今にでも吉永と同じように飛びつきたい気持ちで一杯なのだろうが、そんな勇気があるならとっくの前に話せているから、グッと堪えていた。