「あぁ、そうだな。全く...最近の子はどうも度胸がある....」


野宮さんは噛み締めるようにそう言った。
だが、横にいた坂目さんはガタガタと身体を震わしていた。


「なのに....なんで大人のお前がそんなにビビってんだ?恥ずかしくねぇのか!みっともねぇ!」


「いや....野宮さん。それは無理ですって。俺....こういうの本っ当に無理なんすよ。」


いつも大体無口で、エリートという印象があった坂目さんの意外な一面を見てしまった。

すると、そこで敦が俺達の前に立つと、古びた門を蹴り飛ばした。
ガシャンっと耳が痛くなる音が響き、身体が音と同時に跳ねてしまった。


「じゃあ早く行こうぜ〜。こんな所でいつまでも立ち止まっているわけには行かねぇだろ?そんなここまで来るのにノロノロしてるようじゃあ、屋敷内じゃあなんだ?亀より遅い捜索になるぜ?」


敦は俺が知っているいつもの態度で言った。いつもの敦に戻ってくれた、それが本来嬉しい筈なのだが、今は"いつもの"がおかしく、違和感しか感じなかった。
俺が感じ取った違和感を代弁してくれるかのように、吉永が口に手を抑えながら言った。


「本澤あんた....苦しくないの?」


「は?苦しい?んなわけないだろ?お前車酔いだかなんだか知らないけど、気持ち悪いんなら帰った方がいいんじゃねぇの?」