俺達は重い足を進め、ようやく屋敷の正面まで来た。
正面から見ると思った以上に大きく、もの凄い存在感を感じられた。まるで家に意識があり、中に入ってくるよう甘い言葉を囁きながら手招きされているような感じがする。

ここにきて、俺は一瞬だけ自分の意志を歪めてしまった。"この屋敷には入りたくない"っと強く思って、後ろへ一歩下がった。

だが、ここへ辿り着くまでにどんなに思考や時間を費やしたのかを思い出し、歯を食いしばる。


「....この屋敷...変だな。」


野宮さんがボソッと呟いた。
その言葉に青山が突っかかった。


「そんなの皆感じてますよ。この屋敷は普通じゃない、こんなドス黒い....初めて感じる。」


「あぁ、それもあるんだが...この屋敷と村の民家、時代が明らかに合っていない。この村は歴史ある伝統のようなものを感じるが、この屋敷は明らかに洋風。しかも、傷んでいなければ結構今の社会のいい方の建造物にあたる。」


確かに野宮さんの言う通り、屋敷の雰囲気が強すぎて気付かなかったがとても引っかかる点だ。だが....


「野宮さん、だとしても俺達がやる事は一つです。必ず....手掛かりを探し出すだけです。この屋敷の感じだと、警備しているわけでは無さそうだし、思う存分探せます....」


野宮さんはフッと鼻で笑うと、いつも俺に見せていたあの強い目付きではなく、優しい視線を向けてきた。